ガジェット好きの間で発表時から話題をさらっていた新型「ThinkPad X9」。
前々から気になっていたところ、知人のツテで実機をしばらくお借りすることができました。

しかも今回お借りしたのは、ラインナップの中でもひときわ目を引く「グレイシャーホワイト」、つまり白モデルです。

長年ThinkPadを相棒にしてきた身としては、新しい世代を自分の指先で確かめられるのは素直に嬉しい話です。
ところが、スペックシートを眺めていた段階で、ある一点に目が釘付けになりました。
「……あれ、赤ポチ(トラックポイント)は?」。

あの中央に鎮座する赤いポインティングスティックが、見当たらないのです。

最初は「見落としかな」と思いましたが、調べてみるとX9のAura Editionでは本当にトラックポイントが省かれていました。
正直、第一印象は「カッコいい」と「コレジャナイ」が同時に襲ってきた、という複雑なものでした。
この記事では、実際にお借りして数日使ってみた率直な感想を、良かった点も気になった点もまとめてお伝えします。

長年のファン目線が混ざる点はご容赦ください。
ThinkPad X9(ホワイト)を借りて使ってみた
開封・外観の印象
箱から取り出してまず驚いたのが、その薄さと軽さです。

これまでの「質実剛健で少しゴツい」ThinkPadのイメージとはずいぶん違い、天板はすっきりとミニマル。
そして何より、色が白い。
ThinkPadといえば真っ黒、という刷り込みが体に染みついているので、白い天板には最初けっこうな違和感がありました。

「これ、本当にThinkPad?」と二度見してしまったほどです。
ところが、数日使ううちに印象が変わってきました。
白いボディは指紋や皮脂が驚くほど目立ちにくく、これが地味にありがたい。

黒モデルだと天板やパームレストの指紋が気になって、つい拭きたくなる人も多いと思いますが、白だとその手間がぐっと減ります。

最初の違和感さえ越えれば、白は実用面でなかなか「アリ」だと感じました。
実際の使い心地
電源を入れて最初に触れたのは、やはりキーボードでした。

ここは安心。
打鍵感はまぎれもなくThinkPadで、しっとりとした底付き感と適度なストロークは健在です。
文章を打っていて気持ちがいい。
この一点だけで「ああ、やっぱりThinkPadだ」と少しホッとしました。
ディスプレイを開いて作業を始めると、薄型ボディの恩恵で膝の上に乗せても安定し、持ち運びのストレスはほぼゼロ。
出張やカフェ作業のお供としては、ほれぼれするほど軽快でした。
ただし、肝心のポインタ操作で「あの感覚」を探して指が宙を彷徨ったのは、最後まで慣れませんでした。

使って感じたメリット
とにかく薄くて軽い、毎日持ち歩ける一台
これは文句なしの長所です。
カバンに入れていることを忘れるほどの軽さで、毎日の通勤や移動が苦になりません。
「高性能ノートは重い」という常識を、いい意味で裏切ってくれました。

机に広げたときの省スペース感も含め、モバイル用途では満点に近い使い心地です。
白ボディは指紋が目立たず、見た目もおしゃれ
意外なヒットだったのが、グレイシャーホワイトの実用性です。
前述の通り、白は指紋や皮脂の汚れが目立ちにくく、神経質に拭かなくても綺麗な状態を保てます。

カフェのテーブルに置いたときの華やかさもあり、「黒い箱が並ぶ会議室で一台だけ白」という静かな存在感も楽しめました。

食わず嫌いだった白、思いのほか好きになりつつあります。
有機ELディスプレイがとにかく美しい
お借りした個体は有機EL(OLED)パネルで、これがまた目に毒なほど鮮やかでした。

黒の締まり方が深く、写真やWeb記事を眺めているだけで満足感があります。
動画や画像を扱う作業でも気持ちよく、毎晩寝る前にこの画面でニュースを読むのが地味な楽しみになっていました。
使って感じたデメリット・気になった点
やっぱり寂しい、トラックポイント(赤ポチ)の不在
最大の、そして個人的には致命的に感じたのがこれです。
新幹線の狭いテーブル、飛行機のシート、混んだカフェ。
マウスを広げる余裕がない場面で、ホームポジションから指を一切離さずカーソルを操れる——あの快感こそ、私がThinkPadを選び続けてきた理由でした。

X9のハプティック式タッチパッド自体はよくできていますが、それでも「キーボードの上で完結する」あの思考を止めない操作感とは別物です。
慣れの問題と言われればそれまでですが、長年の相棒の手触りを失った喪失感は、数日では埋まりませんでした。
皮肉なことに、白くて綺麗なボディを眺めるたびに、あるはずの赤がないことを思い出してしまうのです。

ポート類が思い切りすぎている
薄型化の代償か、外部端子はかなり絞られています。
USB Type-C、Type-A、ミニジャック程度で、「何でも挿せる安心感」がThinkPadの魅力だと思っていた身には少し心許ない。


外部機器を頻繁につなぐ人は、ドックや変換アダプタが前提になりそうで、身軽さと引き換えに別の荷物が増える可能性があります。
「これはThinkPadでなくてもよいのでは」という問い
洗練されたデザイン、薄型軽量、美しい画面、そして新鮮な白。

どれも魅力的なのですが、トラックポイントが消えたことで「では、あえてThinkPadを選ぶ決め手は?」と考え込んでしまいました。
新しい層を取り込みたいメーカーの狙いは理解できます。

ただ、コアなファンが愛してきた“尖った合理性”が薄まったのは、ファンとして正直さみしい部分です。
こんな人におすすめ
お借りして使ってみた上で、この一台が合いそうな人を挙げるとこうなります。
- とにかく薄くて軽い、持ち運びやすいノートPCを最優先したい人
- 黒い天板の指紋汚れにうんざりしていて、白の清潔感に惹かれる人
- 有機ELの美しい画面で、Webや動画を快適に楽しみたい人
- 普段からタッチパッド派で、トラックポイントには特にこだわりがない人
逆に、「マウスレスでもトラックポイントがあれば無敵」という赤ポチ愛好家や、豊富なポートを酷使するヘビーユーザーは、慎重に検討した方がよいかもしれません。
まとめ
数日間お借りして感じたのは、「製品としては間違いなく魅力的。でも、私が愛したThinkPadとは少し違う」という、なんとも言えない気持ちでした。

薄さ、軽さ、画面の美しさ、キーボードの完成度は本物で、白ボディの扱いやすさも嬉しい誤算でした。

万人にすすめやすい、完成度の高いモバイルノートだと思います。
それでも、トラックポイントという“アイデンティティ”を外した一台を前にすると、長年のファンとしては手放しでは喜べないのも本音です。

これが一時的な実験なのか、これからの標準になるのか。
借り物を返す段になっても、その問いだけは指先に残り続けました。
みなさんは新型X9、どう感じますか?でわ。
